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昨日の佐賀新聞「ろんだん佐賀」投稿記事の原稿です。薬剤耐性について書きました。

東南アジアの友人と食事をしていた時のこと。私たちのテーブルの周りに1匹の蚊が飛んできました。穏やかに談笑していた彼が途端に真剣な表情になり蚊を追いかけて叩き殺し、そして私に言いました。「蚊は危険だ。私はどこであっても蚊を見たら必ず殺す。私の妻はデング熱に罹って大変だった。」
今は国内発症のない感染症も、地球温暖化に伴う環境の変化などにより発症する事態が起これば、私たちの生活に大きな影響を与えることになるでしょう。
日本政府は国際的に脅威となる感染症としてエボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、ジカウィルス感染症及び薬剤耐性(AMR)を挙げ、このような国際的な脅威となる感染症に対し、政府一体となって総合的な感染症対策の推進を着実に取り組むこととしています。
問題の背景にはグローバル化があります。2009年の新型インフルエンザはメキシコでの発症から数か月間で世界に拡散しました。自分には縁遠い病気と思っていたものが自分たちの周囲で突然発症することもあり得ます。
さてここで注目することとして、国際的な脅威となる感染症の中に薬剤耐性が挙がっています。抗微生物薬に抵抗性を獲得した、薬剤が効かないあるいは効きにくい細菌やウィルスのことで、人や動物の移動に伴い耐性のある微生物が海外から輸入、あるいは国外へ輸出されることが日常的に起こるようになったことから、世界的な健康危機として認識されるようになってきました。
平成28年4月、日本政府は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020」を発表しました。その内容は大きく6項目からなっています。1.普及啓発・教育:国民の薬剤耐性に関する知識や理解を深め、専門職等への教育・研修を推進する、2.動向調査・監視:薬剤耐性および坑微生物薬の使用量を継続的に監視し、薬剤耐性の変化や拡大の予兆を的確に把握する、3.感染予防・管理:適切な感染症予防・管理の実践により、薬剤耐性微生物の拡大を阻止する、4.抗微生物薬の適正使用:医療、畜水産等の分野における抗微生物薬の適正な使用を推進する、5.研究開発・創薬:薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・治療手段を確保するための研究開発を推進する、6.国際協力:国際的視野で多分野と協働し、薬剤耐性対策を推進する、としています。G7の各国の行動計画と日本を比較したところ、国民への普及啓発・教育に関しては不十分という結果でした。平成28年10月に、ある報道媒体が簡易的にアンケート調査をしたところ、抗菌薬はウィルス性の風邪やインフルエンザに効果がないことを知っているかという質問に4割以上が「知らない」と回答し、薬剤耐性について知っているかという質問には3割近くが「全く知らない」と答えています。
平成28年11月に「世界獣医師会・世界医師会¨One Health¨に関する国際会議」が北九州市で開催されました。One Health とは人の健康、動物の健康、環境の保全のために各関係者が緊密な協力関係を構築し、活動することを目指す理念のことです。第2回となった今回の国際会議でも、人と動物の共通感染症である新興・再興感染症が増加している問題と、薬剤耐性菌に係る問題のさらなる進行に対応することの重要性が訴えられていました。
また、抗菌薬の適正使用の概念が浸透することと同時に、感染症の標準予防策としての手洗いと咳エチケット、またワクチン対策や衛生環境など、リスク軽減を図るための総合的なマネジメントの重要性も同時に認識することが求められます。
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かいぼーです!巷ではDr.カイボーとも呼ばれていますが、内科医でフィットネスインストラクターです。フィットネスとは健康のための運動のことです。「フィットネスで人生を変える」をモットーによりみなさんが健康になるためにお役に立てるお話しができればと思っています。よろしくお願いします。

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